kukkanen’s diary

障害年金で暮らす片づけられない女の日記

スマホへのシフトが生み出すADHD脳が活躍する社会

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はじめに

一言でいうと、こういうことなんだけどね。

せっかくなので、ブログに記事としてまとめておくことにしました。

インターネット依存症という精神疾患はあるのか?

たまたま、目にとまったライフハッカーの記事を読んだのがきっかけでした。

www.lifehacker.jp

ほんとうの「インターネット依存症」というものはあるのでしょうか。米Lifehackerではおなじみ、結婚セラピーや家族セラピーを専門とする精神科臨床医のRoger Gil氏に、この質問に対するファイナルアンサーを聞いてみました。

原文では、Roger Gil氏の肩書が"marriage and family therapist"となっているので、同姓同名の研究者(医学)もいますが、医師ではないセラピストの方と思われます。

参考 : Education & Background | Roger S. Gil, MAMFT

インターネットゲーム障害(IGD)

日本の精神科でも使われている診断名のガイドラインであるDSM-5の「今後の研究のための病態」欄にネット依存に関係する項目があります。

Conditions for Further Study : 今後の研究のための病態
  • Caffeine Use Disorder : カフェイン使用障害
  • Internet Gaming Disorder  : インターネットゲーム障害
  • Neurobehavioral Disorder Associated with Prenatal Alcohol Exposure : 出生前のアルコール曝露に関連する 神経行動障害
「DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」(PDF版) - 日本精神神経学会
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中毒者はいるけれど、ネットのせいではない

しかしながら、セラピストのRoger Gil氏は何らかの物事への過集中が従来型の精神疾患の症状として説明がつくものであると主張しています。

「インターネット嗜癖」のように見える要素のある人は、多くの場合、ほかの精神医学的障害や疾患の特徴と言える症状も示しています。例えば、ADHD傾向のある人は何時間もオンラインに没頭していられるでしょうが、この人の症状を総合的に見れば、やはりADHDと言ったほうが筋が通るのです。

報酬系の脳の機能が劣っているADHD患者が、addiction(和訳では「嗜癖」と訳されていますが、一般に「中毒」や「依存症」と呼ばれる状態)になりやすいことにもふれています。

スマホやめますか?人間やめますか?

そこで思い出されるのが、先日の信州大学学長の言葉です。

スマホの「見慣れた世界」にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます。

「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」

スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう。自分の持つ知識を総動員して、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てます。

平成27年度入学式学長あいさつ (2015年4月4日)|信州大学

これに対して、 奈良県立医大の学長が反論して、スマホ中毒をテーマにした論争が勃発したとメディアが伝えています。

細井学長はこれに「理解できない」と反発し「スマホが独創性豊かな学生を育てることを阻害しているエビデンス(証拠)はあるのか」と疑問を呈した。

その上で「みなさんが学ぶのは証拠に基づいた医学、看護学で、どうもそうらしい、という固定観念は禁物」と述べ、新入生にスマホの利用を奨励した。

奈良医大の学長 信州大学長の「スマホやめますか」発言を批判した格好 - ライブドアニュース

ゲーム依存症のサブタイプとして議論されるスマホ中毒

そもそも、「スマホ中毒の定義とはなんぞや?」というところに目を向けると、それを論じる側が前提としているスマホの価値基準が、一般人のそれとは大きくかけ離れていることがわかります。

残念なことですが、昨今、この信州でもモノやサービスが溢れ始めました。その代表例は、携帯電話です。アニメやゲームなどいくらでも無為に時間を潰せる機会が増えています。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。

平成27年度入学式学長あいさつ (2015年4月4日)|信州大学

信州大学の学長にとってのスマホは、暇つぶしの道具でしかないようです。

以下の記事でも取り上げましたが、ニールセンの調査を見ると、スマホは"時間をつぶす"ためのものではなく、"時間を節約する"ためのツールであることが私たちの共通認識だと考えています。

  • 働く世代の3人に2人がスマホを所有
  • 2014年のスマホからWebへのアクセスは4,549万人を記録 

www.kukkanen.tokyo

《「インターネット依存症」って本当の病気なの? 専門家に聞いてみた | ライフハッカー[日本版]》からリンクしている記事でも、IDG(Internet Gaming Disorder  : インターネットゲーム障害)は「インターネット中毒やビデオゲーム中毒のサブタイプ」として見ることができても、同じカテゴリーで扱うことによる混乱が懸念されています。

IGD can be viewed as a subtype of either internet addiction or video gaming addiction. In the context of insufficient data to justify classification of internet activities other than video gaming, the DSM-5 category of IGD may create additional conceptual confusion by conflating video gaming and internet use within a single classification.

Issues raised by the DSM-5 internet gaming disorder classification and proposed diagnostic criteria - Dowling - 2014 - Addiction - Wiley Online Library

スマホの画面サイズが生み出したマイクロコンテンツの台頭

私自身がIngress*1以外のゲームまったく知らないことと、ここまでの考察をふまえて、スマホの特性について語るなら、まず第一にその画面サイズに注目します。

スマホの画面サイズは4インチ前後

大きめのものだとiPhone 6 Plusが5.5インチ(158mm*78mm)です。

コンパクト型では、freetel priori3.5インチ(117mm*62mm)などがあります。

スマホに最適化されたTwitterの文字数制限

ご存知のとおり、Twitterはツイート内容を140文字以内に収めなければなりません。

スマートフォンでタイムラインを眺めた時に、この制約が持つ意味を知ることになります。

つまり、Twitterはスマホの小さな画面を流れるように設計されたマイクロコンテンツなのです。

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Twitter登場以前のネットで個人が情報発信できるメディアといえば、ブログがありました。

もちろん、ブログというシステムを使って、短い文章や写真を投稿することも自由ですが、以下にあげるTwitterの仕様がコンテンツ公開のハードルを下げたことは大きな功績です。

  • まとまった意見ではない、短い"つぶやき"が許される
  • コンテンツに件名をつけなくてよい

ADHDとブログ

自戒を込めて分析すると、ADHD系のブロガーは概して筆力がありません。私のブログ「kukkanen’s diary」も何が言いたいのかよくわからない冗長な記事がほとんです。

これは、ADHDという障害の原因に前頭前野の機能不全が疑われているからです。

普通の人より、ワーキングメモリーの容量が少ないので、その分処理できる情報量も限られています。

ADHD当事者がTwitterにはまるのは、喧伝される"ネットの中毒性"とは別に、扱われている情報がコンパクトであり、それを読み書きする脳に負担がかからないからだと考えることができます。

ソーシャルメディアのタイムライン化

時系列でコンテンツが流れる形式のWebサイトを「タイムラインメディア」や「リアルタイムウェブ」と呼びます。

死語となりましたが、「渋谷なう」*2などに象徴されるように即時性が好まれるTwitterや、「既読スルー」を許さない空気がある同期型コミュニケーションのLINEなどが、これらに分類されます。

http://lineofficial.blogimg.jp/ja/imgs/e/9/e9912e48.png

【幹事さん必見】友だちみんなで日程調整ができる「LINE スケジュール」機能登場! : LINE公式ブログ

古くからあるFacebookやmixiといったSNSも、ユーザーインターフェースをスマホに最適化することによって、生存戦略をはかってきました。

一般にADHDは、物事の優先度を判断したり、タスクの順番を決めたりするのが苦手です。Twitterに代表されるタイムライン型のメディアは「プッシュされる情報を何も考えずに読む」ことができる点も私たちの特性に向いています。

ADHDの"衝動性"が意外なところでメリットに生まれ変わる

個人向けのメディアだけでなく、企業内の情報共有のタイムライン化も進んでいます。

エンタープライズ・ソーシャル(企業SNS)を導入することで、社員が情報を得るスピードは格段に向上します。情報を共有する術がない組織は、メールや会議などのオフィシャルな業務ラインに沿って確認したり、属人的な情報収集に頼るため、伝達スピードが遅く、情報の格差や偏りも生じてしまいます。

エンタープライズ・ソーシャルが働き方を変える:なぜ、企業向けSNSを使うと“会議が減る“のか - ITmedia エンタープライズ

現在の日本で業種を問わず共通して求められるのは、スピード力です。

一般企業に勤めている人が受信するメールは、一日に数百通を超すことも珍しくありません。

そうした環境で、迅速な情報共有ができるシステムとして、主流になりつつあるのが社内SNSなどと呼ばれるタイムライン型のシステムです。

タイムラインには常に最新の情報が投稿され、その情報に関心がある人はいつでも確認できる。発信された情報に対する意見やアイデアも、“思ったときにすぐ書き込める”ので、情報発信者に新たな発見や気づきをもたらします。こうした流れは“情報の質の向上”にもつながるのです。

http://image.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1504/16/l_sa_mb50.jpg

エンタープライズ・ソーシャルが働き方を変える:なぜ、企業向けSNSを使うと“会議が減る“のか - ITmedia エンタープライズ

上のスクリーンショットを見ればわかりますが、社内だけに閉じられたFacebookやmixiみたいなものをイメージしてください。

十数年前までなら、グループウェアと呼ばれていたシステムです。

現在は、ユーザーインターフェースにタイムラインを採用して、ソーシャルメディアの特性である気軽さを企業活動に活かそうとしています。

思ったときにすぐ書き込める

どこかで聞いたようなフレーズです。

そうです!

ADHDの症状として、「思ったことをすぐに口にする」や「衝動的に行動に移す」といった言動があり、これらは治療の対象とされています。

www.kukkanen.tokyo

「衝動性」と呼ばれるADHDの特性は、エンタープライズソーシャルを実現するという側面で見ると、むしろ歓迎されるアクションであり、そこから新しいアイディアが生み出されることを促進しています。

これはすなわち、スマホ文化による創造性であり、信州大学の学長が否定したものです。

こんなふうに考えてみると、世の中がモバイルフレンドリーに進化すればするほど、ADHD的思考が活かせる場面が増えるような気がしています。