はじめての「障害者相談支援事業所」利用レポート
相談支援事業とは
最近、障害者向けの相談支援事業というものを知って、この利用を開始したので経過をレポートしたいと思います。
私たち障害者が、公的な福祉サービスを受けたり、社会復帰のために作業所に通いたいと思い立った際に、役所の窓口やそのサービスを提供する事業者に直接問い合わせることもできますが、下図に示したように自治体から委託された相談支援事業者がこれらを無料でサポートしてくれる制度があります。
障害のある人に対する相談支援について|厚生労働省によると、具体的な支援内容は以下の項目があります。
- 一般的な相談をしたい場合(障害者相談支援事業)
- 障害福祉サービス等の利用計画の作成(計画相談支援・障害児相談支援)
- 施設や精神病院からの退院する人向けの支援(地域移行支援・地域定着支援)
- 保証人がいない等の理由から一般の賃貸物件に入居するのが難しい障害者向けに家主への相談調整など(住宅入居等支援事業(居住サポート事業))
- 知的障害者や精神疾患から判断能力が不十分な障害者が福祉サービスを受けるための支援(成年後見制度利用支援事業)
相談支援を受けるまでの流れ
相談支援というサービスを受ける大まかな流れは以下のようになります。
- 自治体の窓口で紹介してもらう
- 電話で面談の予約する
- 相談支援事業所を訪問、または相談員に自宅等に来てもらって面談
- 相談支援サービスの登録申込
- 相談や福祉サービス利用のための支援を受ける
相談支援事業所をネットで検索する
自治体で精神障害者向け福祉を担当している窓口に行くと、その地域の相談支援事業所を紹介するパンフレットなどをもらえる場合もありますが、 WAM NET(福祉医療機構が運営する、福祉・保健・医療の総合情報サイト)などで検索することもできます。
相談員との面談内容
私は自治体の窓口から紹介された自宅近くの相談支援事業所に家族と出向き、1時間ほどの面談を受けました。女性の相談員2名から聞かれた内容は以下の項目で、答えたくない内容については無理に話さなくてもよいとのことでした。
- 病歴や現在の処方内容
- 生育歴や職歴
- 困っていることや希望していること
私が相談支援事業所を訪問した当初の目的は住居に関することでしたが、自分が考えていた内容を実現するのは現在の状況では難しいことと、まずは自宅外で日中通えるところを見つけるのがよいでしょうというアドバイスをいただきました。
作業所の紹介
そして、勧められたのがとあるB型の作業所です。正式には「就労支援継続B型事業所」というもので、以前の記事でも紹介していますが雇用契約を結ばず、わずかな工賃をいただきながら仕事をさせてもらう場所です。
相談員さんがこの作業所を推薦する理由として、
- 電車に乗らなくても通える私の自宅近くにあること
- 利用者は女性のみであること
の2点を挙げて、「これなら、安心できるでしょ」とおっしゃいました。
私自身は東急田園都市線のような殺人的なラッシュでなければ、通勤に電車を使うことに抵抗はありません。むしろ近所の人に見つかってしまう可能性があり、昼ごはんに外食する場所もなさそうな住宅街に通所する方が不安だったりします。
ですが、「精神疾患=人混みや乗り物でパニック&異性にトラウマ」という刷り込みがあるのでしょうか?
あまり芳しい反応を示すことなく、沈黙したままの私にそのビーズアクセサリー制作など手芸中心の作業所を「まずは、一緒に見学してみましょう」と話を続けました。
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その他の対人援助職との違い
以前にもデイケア、作業所、障害者枠での就労など、自分なりに今後の身の振り方を模索する上で、さまざまな人から助言をいただいています。
臨床心理士さんからは、こういった福祉の枠組みにあてはめるより、もっと違った形の社会とのつながり方を考えた方がよいかもしれないと言われていました。カウンセリングを通して、長期間にわたり私の特性や症状をよく観察した上でのアドバイスなので、妥当な指針として受けとめています。
通院先の精神保健福祉士さんに「作業所にはどんな仕事がありますか?」と聞いた時は「例えば、掃除などです」という答えが返ってきました。それ以上詳しく相談できない私のコミュニケーションスキルでは「そういう作業は自分に難しそうです・・・」と話が終わってしまいます。
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これらの対人援助職と、相談支援事業所の相談員の違いは、次の項目で具体的に説明しますが、福祉サービスを利用するための支援を業務の目的としている点です。
医療機関に所属するカウンセラーやワーカーの方々も福祉制度に関する情報を提供してくれますが、限られた時間の中で個々の患者のサポートを手取り足取りできるほどのマンパワーはありませんし、おそらくそういったことを前提とする診療報酬体系ではないはずです。
相談支援事業の報酬体系は、厚生労働省のサイトに『障害福祉サービス費等の報酬算定構造』(PDF)が公開されており、計画相談には以下の項目を請求できるようです。
- サービス利用支援費 (1月につき1,606単位)
- 継続サービス利用支援費 (1月につき1,306単位)
つまり、単なる相談で終わらすのではなく、国が指定する福祉サービスを利用させる方向で動かないことにはこの支援費を算定できないということなのではないでしょうか?
相談支援事業所が提供してくれるサービス内容
全国社会福祉協議会発行の『障害福祉サービスの利用について』平成26年4月版(PDF)の10〜11ページに相談支援の事業内容と、障害者・障害児それぞれの支援体系が掲載されています。
今回の私の相談内容を例に相談支援事業所が提供を約束してくれた内容を書き出してみます。
- 利用できるサービスに関する情報提供(日中を過ごす場所としてのB型作業所)
- サービス事業者との連絡調整(B型作業所への見学同行等)
- 「サービス利用等計画」の作成(市区町村への提出)
- サービス利用開始後のフォロー
相談支援事業所への登録
相談支援事業そのものが公費負担のサービスなので、これを正式に申し込むために利用者登録が必要になります。
変更は可能ですが、同時に複数の相談支援事業所に登録することはできません。
今回、私は初回の面談終了時に申込書を記入しましたが、その事業所が得意とする障害の分野などを自治体の窓口の方に教えてもらったり、パンフレットやWebサイトがあれば、事前に見ておいたりすると、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。
個人情報に関する承諾書の記入と医療機関への連絡
相談支援事業所への申込と同時に、個人情報に関する承諾書へのサインを求められました。杓子定規に「承諾書の控えをください」と申し出るのは、いかにもめんどくさい発達障害者っぽい印象を与えそうなので遠慮しましたが、口頭で説明された内容は以下2点です。
- 事業所が預かる利用者の個人情報は外部に漏らさないことを約束
(これは、一般企業が提供するサービスと同じですね) - 通院先の医療機関等へ連絡する可能性があることの許諾
(利用者の動向を逐一知らせるというようなことはないでしょうが、障害の性質上なにかあった際に主治医などと連携をとるということでしょうか)
以上が、はじめての「障害者相談支援事業所」体験レポートでした。
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