kukkanen’s diary

障害年金で暮らす片づけられない女の日記

発達障害の診断と二分思考

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発達障害は子供自身が困っているかどうかで決まるのか?

《ホッテントリ》で発達障害の定義に関する問題提起を見かけ、ちょっと気になったので、私のブログでも取り上げてみることにしました。

nanaio.hatenablog.com

連ツイの始まりは「フェミニストによる同性愛差別」だった

id:nanaioさんを複雑な気持ちにさせた方の発言をたどると、「種々の差別感情の根底には二分法という浅薄な思考がある」というオピニオンでした。

ここで言及されている朝日新聞の元記事はWeb上で見つかりませんでしたが、先の地方選挙ではLGBT*1であることを公表している候補者や、性的マイノリティの権利を守る条例を推進する方が初当選したことなどが話題になりました。

www.huffingtonpost.jp

二分思考により生み出される差別

そして、ツイートはLGBTに限定されない一般的な「差別」感情に対する考察が続きます。

すべての人間はスペクトラムとして構成される

「白黒のどちらかにハッキリさせないと気がすまない」という考え方とは異なる概念である連続体について、「自閉症スペクトラム」を例に説明されています。

上記のツイートにある本田とは、『自閉症スペクトラム -10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』(Amazon)などの著書がある精神科医の本田秀夫氏のことです。

DSM-5における自閉症スペクトラムの診断基準

日本の社会背景を説明する学術論文などに"ikizurasa"(生きづらさ)や"hikikomori"(引きこもり)という表記があります。

DSMの英語原文で「生きづらさ」がどのように表現されているのかはわかりません。

参考までに、DSM-5では自閉症スペクトラムを3つのレベルに分けています。

「自閉症スペクトラム障害の重篤度(DSM-5)」主な特徴の抜粋
Lv必要な内容社会的コミュニケーション固定的・反復的行動
3 非常に本質的な支援 相互作用を引き起こすのが希な知的な会話の言葉が少ない人は、もっぱらニーズに合致する異常なアプローチを行い、非常に直接的な社会的アプローチのみ反応する。 すべての領域の機能に著しく干渉する。
2 本質的な支援 単文のみを話し、その相互作用が狭い空間的な関心に制限され、著しく奇妙な非言語的なコミュニケーションをする人。 しばしば明確に出現し、様々なコンテキストで機能に干渉する。
1 支援 全文で話すことができ、コミュニケーションに係るが、その会話はあちこちに飛び通じない。友人を作ろうとする試みは奇妙で典型的に失敗する。 組織化や計画性の問題が独立性を妨害する。

出典: 「アメリカ精神医学会の改訂診断基準 DSM―5:神経発達障害と知的障害,自閉症スペクトラム障害」(宮川充司/椙山女学園大学教育学部紀要)PDF

本人が能力不足を自覚していない場合は障害といわないのか?

id:nanaioさんは、お子さんの主治医から「アスペルガー症候群とADHDではあるが、本人が困っていなければ障害とはいえない」と説明されたそうです。

ブログでは、さらにご主人を例に障害特性に気がついていない場合、周りの人が困惑するリスクがあることを説明しています。

「片付けができない」とか「空気が読めない」といった何らかの能力が人より劣っている場合に、それをどう捉えるかで次のように分けることができます。

特定の能力 低い 低い
周囲の人 困る 困る
本人 困っている 困っていない
トラブルの原因 自分 他者や偶然

発達障害を認めることで広がる可能性

本人が困る前に障害を認めれば、成人後の特性による困難や孤立のリスクを下げることができるはず、と語られています。

発達障害 認める 認めない
療育などの支援 受けられる 受けられない
本人 特性を自覚 気づかない
周囲 特性を知った上で養育や支援 定型発達の基準で育てることが困難
社会適応 できる可能性が高まる できないことから二次障害が発生する確率が高まる

正式に診断が出る出ないは、学校で支援を受けたり、福祉サービスに繋がったりする上で必要である場合が多く、「本人が困っていない」ということで診断がつくつかないの分かれ目とするのであれば、それはどうなんだろうと疑問に思いました。

なんらかの診断名がつけられるということは、発達障害に限らず、その他の疾病においても以下のような社会資源を利用する上でマストとなります。

自立支援 精神科外来通院費用を公費で軽減
療育手帳や精神障害者手帳 療育や作業所に通うなどの福祉サービスが受けやすくなる
障害年金 経済面での支援

診断後の道のりも二分されるものではない

発達障害を当人や親が受容するだけでなく、医師が障害と認めてくれるかどうかが、その後の人生にどう影響するかを簡単にまとめてみましたが、実際には二次元の表でカテゴライズできるほど、現実世界は単純ではありません

人間の可能性は無限大であっても、使える時間は等しく24時間365日しかないので、発達障害児向けの特別な教育を受けるということは、定型発達として成長する場合と比較して、何かが不足してしまうこともあるはずです。

id:nanaioさんのご家庭では、通信教材で先取り学習を進めたり、算数オリンピックに参加したりといった、良い特性を伸ばす方向でも他のお子さんと異なる教育を実践されていますが、それがままならなかった悲劇も過去の記事で取り上げました。

www.kukkanen.tokyo

ただ、親の方が子供の養育に関して困っていると訴えているというのは、ヘルプサインなのです。

これは、よほどのことがないとなかなか出せるものではないのではと思います。

相談施設や医療機関に我が子のことを相談すると言うのは、もしかしたら我が子に「障害」と言うレッテルを貼ってしまうことになるかもしれないと恐れ、困っていても疑っていても避けて通る人はたくさんいるのです。

その高いハードルを乗り越えてまで相談に来ているのは強いヘルプサインなのです。 実際に私自身もそうでしたから。

リスパダールのような抗精神病薬や、コンサータといった中枢神経を刺激する治療薬が子供に投与されることをセンセーショナルに批判する報道もありますが、上記に引用したメッセージにあるように、藁にもすがる思いで診断名を求める親御さんがいるのも事実なのです。

www.kukkanen.tokyo

障害特性を持つお子さんを育てる方の苦労を、他人が推し量ることの難しさは、身体の障害のように可視化されないだけでなく、「ある」「なし」といった二分思考で判別できないからでもあります。

「お母さんが大変でも、お子さんが困っていないのなら障害じゃないね」

そう言ってしまうのは、簡単です。その答えが以下のツイートです。

つまるところ、「非障害性自閉症スペクトラム」という概念が表しているように、現実世界をどう生きるかは複雑な要素で構成されることを改めて感じた話題でした。

二分法連続体
定型と発達障害 定型と分断されない自閉症スペクトラム
診断名がすべて (現実世界)

最後に別のお母さんのブログを紹介します。

4月からお子さんを支援学級へ託す保護者の皆さん。

不安でいっぱいでいらっしゃるのではないかと思います。

大事なのは、支援学級へ入れる事ではありません。

支援学級へ入れてから、どの様な支援をお願いするかが大事なのだと思います。

お子さんの特性をしっかりと把握し、学校側と話し合いを重ねて、お子さんの支援をコーディネートしてあげてください。

お子さんに合った支援を受けられれば、伸びやかに成長する姿が見られると思います。

発達障害の次男を支援学級へ一年間託して思うこと - フミログ
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*1:Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender(性転換者など)の略語。参考:【LGBT】上川あやさん・石川大我さん...統一地方選、性的マイノリティーの当落は(UPDATE)