kukkanen’s diary

障害年金で暮らす片づけられない女の日記

精神障害年金は働いたらNG?入院は有利?厚生労働省が公開した審査認定医の声より

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はじめに

昨日のエントリーでも取り上げた、精神で申請された障害年金に関する事例について、その続編としてこの記事を書きます。 

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この記事で紹介する事例は以下の「精神障害」に関するもので、「知的障害」や「発達障害」の事例についての議論は別途まとめる予定です。

  • 統合失調症
  • 双極性障害
  • うつ病etc
事例の評価内容一覧 (資料2)第2回検討会に提出した事例の概要(PDF)
事例収集対象 新潟、千葉、石川、兵庫、広島、北海道、宮城、香川、福岡、本部(厚生年金)
事例に関する議論 (資料3)第2回検討会における議論の概要(PDF)
新しい審査基準の提案 (資料6)等級判定のガイドラインの考え方について(PDF)

出典: 精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会審議会資料 |厚生労働省

1級と2級の境界線

番号1〜7は、1級と2級を分ける境界線上にある事例です。

▼表A: 1級該当(2級該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
1 5 3.9  
2 5 4.0  
▼表B: 2級該当(1級該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
3 5 3.6  
4 4 3.7  
5 4 3.7  
6 4 3.0  
7 5 3.7  

精神科への入院経験は障害年金の審査に影響を与えるのか?

《1級該当事例について》

  • 診断書の現症日が入院直後の場合、たとえば医療中断によって病状が悪化している急性期の症状であれば、この障害がずっと固定したものとは認められないのではないか。
  • 長期入院の中でも、病棟内でそれなりに良い状態を保っている人と、全くそうでない方とに分けられる。生活状況がそれなりならば、1級に当たらないのではないか。

一般的には、精神障害1級は在宅でもほぼ寝たきりであったり、入院が長期に渡っていたりする人を想定しているようです。

ただし、以下のツイートにもあるように年金目当てで入院実績を作る人もいるようです。

新しい審査基準では?

精神・知的・発達の障害年金審査フローとして、下図の内容が検討会で提案されています。

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第一段階として、程度(5段階)判定(4段階)を年金機構の職員が確認することが案として挙げられていますが、これらは数値化できるのでコンピュータによる判断も可能と考えられます。

その後、第2段階として認定医がその他の要素を加味した総合的な判断を下すという流れです。

第1段階 日常生活能力の「程度」と「判定」の数値化
第2段階 その他の要素との総合評価

現状では、数少ない認定医が診断書の裏面にある生活能力の「程度」と「判定」を数秒の目視で等級を決めていると言われており、これらの確認作業を年金機構の職員やシステムに任せることができれば、不支給率の地域差や不公平感が解消されるかもしれません。

厚労省は「障害の状態が適切に反映されるよう、認定医はきちんと判定している」との見解を示しているが、西日本のある認定医は「更新の場合は1件にかけられる時間は数秒から十数秒」と明かす。「支給されるべき人に支給されないとか、その逆のことが多くの地域で起きているはず。反省を込めて、この状況はいけないと思う」

【障害年金の審査に地域差】 「誤判定、確実に存在」 現場の医師、国に不満 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)

参考までに、総合評価に盛り込む要素として、入院に関する項目は次の内容が上がっています。

  • 隔離・拘束の有無やその期間
  • 院内での病状の経過
  • 入院の理由

日常生活能力の程度が重くても等級が落とされる診断名

表Bの3番と7番のように、日常生活能力の程度が5段階評価で一番重い(5)でも2級となったケースがあります。

日常生活能力の程度が(5)で入院中でも、統合失調感情障害は波があって予後がよいとされていること、隔離や拘束のないことを考慮して、2級と考える。

この他に、うつ病や双極性障害といった診断名が等級決定に大きく左右した事例がいくつかあり、次の記事にまとめました。

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2級と3級の境界線

2級にすくい上げられた事例と、3級の設定がある厚生障害年金または不支給(障害基礎年金)となったケースは以下の2つの表をご覧ください。

▼2級該当(2級非該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
8 3 2.0  
9 3 2.1  
10 3 2.4  
11 3 2.6  
12 4 2.9  
▼2級非該当又は3級該当(3級該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
13 2 2.4  
14 3 2.4  
15 3 2.9  
16 3 2.6  
17 3 2.3  
18 4 3.1  

精神障害2級での就労は可能なのか?

《2級非該当事例について》

双極性障害の診断だが、接客の仕事ができていることなどから、2級非該当と考える。近年、双極性障害という診断がすぐに出てくるようになっている。

上記の認定医の発言から、就労の可否やその職種などで障害の程度が軽いとみなされるケースはやはりあるようです。

精神障害の関係団体からも検討会に次の意見が寄せられており、明確な基準の創設が望まれていることがわかります。

例えば、一般就労していても帰宅時には疲れ果て夕食もとらず、入浴もしない場合等、同居の家族の支援があってこそ、ようやく就労できているわけです。

その点、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断するとの視点は評価します。

そのためにも、より明確で家族や当事者、一般の人にもわかるような明確な基準が求められるものと思います。

就労したら年金がもらえなくなるという不安がストレスとなって病状悪化にもつながります。

「専門家検討会への意見書」公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 -(資料1)関係団体からの意見(PDF)

申立書の日常生活状況欄

《2級該当事例について》

気分障害に関しては、よく病態を主治医に、日常生活状況を請求者本人に質問して書いてもらっている。日常生活状況は、誰が記載したかも明確にしてもらっている。

障害年金を申請する際は、医師に依頼する診断書とは別に「病歴・就労状況等申立書」を提出します。これは、本人または代理人(家族・支援者・社会保険労務士etc)が記入するもので、裏面に「日常生活について」という欄があります。

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年金について - 病歴・就労状況等申立書を提出しようとするとき | 日本年金機構

以下の項目について、4段階で評価します。

着替え・洗面・トイレ・入浴・食事・散歩・炊事・洗濯・掃除・買物

1 自発的にできる
2 自発的にできるが援助が必要
3 自発的にできないが援助があればできる
4 できない

日常生活において本人がどのくらい不自由さを感じているかを記入してください。

主治医に確認する必要はありません。

日本年金機構が公開している記載例では、主治医に確認する必要はないと書かれていますが、これらの項目は診断書裏面の左側にある「日常生活能力の判定」と内容がかぶるので、実際には提出前にすり合わせが必要です。

3級と不支給の境界線

3級の当落を決める鍵となる発言は、公開されている資料にはありませんでしたが参考までに。

▼3級該当(3級非該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
19 2 2.6  
▼3級非該当(3級該当との境界)
 日常生活能力の就労
事例番号 程度 判定
20 3 2.4